「未経験OK」の求人、その多くがSESです
求人サイトで「未経験歓迎・研修充実・高収入」というエンジニア求人を見かけたら、その多くはSES企業です。ところが応募する側の多くは、SESがどんなビジネスモデルなのかを知りません。この情報格差こそが、入社後の「こんなはずじゃなかった」を量産しています。
先に結論です。SESという働き方自体は悪ではありません。ただし、構造を知らずに入ると後悔しやすい働き方No.1です。実務経験者にとっては合理的な選択になり得る一方、未経験者にとってはリスクの塊になります。
この記事では、SESの仕組みを自社開発・受託開発と比較しながら整理し、メリット4つ・デメリット6つ、向いている人・向いていない人まで解説します。エンジニア転職を考えている人が「求人のラベルの裏側」を読めるようになることがゴールです。
この記事でわかること
・SESのビジネスモデルと契約の仕組み
・SES・自社開発・受託開発の違い(比較表つき)
・SESで働くメリット4つ・デメリット6つと対策
・SESに向いている人/向いていない人
SESとは?ビジネスモデルと契約の仕組み
SESとは「システムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)」の略で、エンジニアの技術力をクライアント企業に提供するサービスのことです。エンジニアはクライアント先(またはそのプロジェクト)に常駐して働くため、「客先常駐」とも呼ばれます。お金の流れは次のとおりです。
- SES企業がクライアントと契約し、エンジニアを常駐させる
- クライアントがSES企業に報酬を支払う
- SES企業が利益(マージン)を差し引き、エンジニアに給料を支払う
契約の建前として押さえておきたいのは、SESは一般に準委任契約(成果物ではなく労働力の提供を約束する契約)で、エンジニアへの指揮命令権はクライアントではなく所属するSES企業にあるという点です。
ここが、派遣先に指揮命令権がある「派遣契約」との大きな違いです。もっとも、現場ではこの建前が崩れているケースも少なくありません。
SES・自社開発・受託開発の違い【比較表】
エンジニアが働く企業は、大きくSES・自社開発・受託開発の3タイプに分かれます。違いを比較表で整理しましょう。
| 項目 | SES | 自社開発 | 受託開発 |
|---|---|---|---|
| 開発するもの | クライアントのシステム | 自社のサービス | 他社から請け負ったシステム |
| 働く場所 | クライアント先に常駐 | 自社 | 基本は自社 |
| 収益源 | エンジニアの労働時間 | サービスの売上 | 納品物の対価 |
| 給与水準の傾向 | 低め(マージン構造) | 事業の収益次第 | 中間 |
| スキルの傾向 | 広く浅く | 深く狭く | 案件により幅広い |
| 上流工程の経験 | しにくい | しやすい | 案件による |
| 未経験の入りやすさ | 入りやすい(要警戒) | 狭き門 | 中間 |
それぞれの働き方の詳細は自社開発企業とは、受託開発とはで解説しています。「未経験が入りやすい」というSESの特徴が、なぜ「要警戒」なのか。メリット・デメリットを順に見ていきます。
SESで働くメリット4つ
1. 多くの現場を経験できる
SESは案件ごとに常駐先が変わるため、多くの現場を経験できます。さまざまな技術・開発フロー・チーム文化に触れられるので、スキルの幅と人脈が同時に広がるのが最大の魅力です。同じサービスを作り続けるのに飽きてしまうタイプの人にも向いています。
2. ドライな人間関係で働ける
常駐先にいるのは上司ではなくクライアントです。上司・部下・同期のようなウェットな人間関係ではなく、外部のプロとして一線を引いて扱われる傾向があります。ミスで長時間詰められることは少なく、現場を離れる際に強く引き止められることも稀です。人間関係のしがらみが苦手な人には働きやすい環境です。
3. 無茶な残業を押し付けられにくい構造
前述の通り、SES(準委任契約)ではエンジニアへの指揮命令権は所属元にあります。つまりクライアントがエンジニアに直接残業を命じることはできない建前です。契約で稼働時間の幅が決まっていることも多く、構造的には長時間労働に歯止めがかかりやすい働き方です。
ただしこれはあくまで建前。実際の労働環境は常駐先とSES企業の力関係に大きく左右されるため、「SESだから残業がない」と鵜呑みにはしないでください。
4. 正社員として社会保険・厚生年金に入れる
ここまでのメリットは、実はフリーランスエンジニアにもほぼ当てはまります。SESならではの最大のメリットは、正社員としての雇用の安定と社会保障です。
厚生年金や健康保険に会社負担つきで加入でき、雇用保険もあります。「常駐型の働き方をしたいが、フリーランスのリスクは取れない」人にとって、SESは中間的な選択肢になります。
SESで働くデメリット6つと対策
1. スキルやキャリアを自由に選べない
SES企業の面接では「あなたのスキルアップを全力でサポートします!」と言われます。しかし、その具体性や保証はどこにもありません。配属はあくまで「その時ある案件」から決まるからです。
入社してみたら「今はJava案件しかない。やらないと仕事がない」と言われる。最悪の場合、エンジニアと無関係の業務に回され続ける——現場でよく聞く失敗パターンです。
対策
・入社者のレビューを複数のサイトで確認する
・案件を選べるだけの実力をつけてから入る
2. スキルを深めにくい
常駐先に、あなたを育ててくれる上司はいません。困ったときに多少頼ることはできますが、良い顔はされません。プロとして買われている以上、当然の反応です。自走できない状態で常駐に出ると、成長が止まったまま現場をたらい回しにされるリスクがあります。
対策
・自走できる実力をつけてからSESで働く
3. 辞めにくい
短期間での退職履歴が増えると、転職で不利になります。特に実務未経験で入社した会社をすぐ辞めると、次の就職はかなり苦戦します。この「辞めたら経歴に傷がつく」という心理を突かれて、多少理不尽な配属でも我慢せざるを得なくなるのがSESの構造的な闇です。
対策
・退職履歴が増えても評価される実力をつけてから入る
・入社前の見極めに最大限の労力をかける
4. 給与が低くなりやすい
クライアントが支払う報酬からSES企業のマージンを差し引いた分が給与の原資になります。中間業者を挟む分、クライアントに直接雇われるより給与が低くなるのは構造上避けられません。多重下請け(SESのさらに下にSESが入る形)になると、マージンは何重にも抜かれます。
対策
・還元率(単価に対する給与の割合)を公開している会社を選ぶ
・商流が浅い(クライアントに近い)案件を持つ会社を選ぶ
5. 待機期間に収入が下がる場合がある
案件が終了してから次の案件が決まるまでの「待機期間」の扱いは会社によって大きく異なります。給与が満額出る会社もあれば、大幅に減額される会社、事実上収入が途絶える会社もあります。
対策
・待機期間の給与規定を入社前に必ず確認する
・十分な貯金を用意してから入る
6. 闇の深い企業が紛れている
「実務未経験者を雇ってIT無関係の仕事に回し続ける」「辞める際に損害賠償をちらつかせる」「待機期間は無給」——すべての会社がそうではないものの、こうした企業が一定数存在するのがSES業界の現実です。
そして実務未経験者がブラックSESを見抜くのは至難の業。入らなければ分からない闇もたくさんあります。
実際の潜入調査レポートがこちらです。
未経験でSESはやめとけ?ブラックSESの実態・見分け方・脱出法【実話】未経験の1社目にSESはなぜ『やめとけ』と言われるのか。ブラックSESへ入社し3週間で辞めた実話をもとに、危険な6つの理由、実態、見分け方7項目、脱出法3ステップ、自社開発・受託開発との違いを解説します。frontendlab.magicgifted.com
対策
・ブラック企業を見抜く目と、いつでも転職できる実力をつけてから入る
・業界事情に詳しい転職エージェントに内情を確認する
SESに向いている人・向いていない人
向いている人①:実務経験が豊富な人
ここまで挙げたデメリットのほとんどは、実務経験があれば打ち消せます。案件を選べる立場になれるし、理不尽な環境ならすぐ転職できるからです。メリットに魅力を感じ、リスクを実力でカバーできるなら、SESは十分に合理的な選択です。
向いている人②:雇用の安定と社会保障を優先したい人
SESのメリットの多くはフリーランスにも当てはまり、収入面だけならフリーランスの方が有利なことが多いです。それでもSESを選ぶ合理性があるのは、正社員としての雇用の安定・社会保険・厚生年金を重視したい人。たとえば扶養家族が多い場合、稼ぎ頭が倒れたときの保障の厚さは大きな安心材料になります。
なお、給与所得と事業所得では税や社会保険の扱いが大きく異なるため、「フリーランスとSES、手元にいくら残るか」は個々の状況次第です。具体的な損得は税理士や公的機関の情報で必ず確認してください。
向いていない人:実務未経験者・貯金がない人
特殊な事情がない限り、実務未経験でのSES入社はおすすめしません。中には未経験を本気で育てる優良SESもありますが、それを外から見極めるのは至難の業。ブラックの可能性が高い上に辞めにくい、危険なガチャは回さないのが得策です。詳しくは未経験でSESはやめとけと言われる理由で解説しています。
また、金銭的な余裕がない人も要注意です。収入が途絶える恐怖から不利な案件を断れなくなり、キャリアの主導権を失いやすいからです。
まとめ|SESは「上級者には便利、初心者には危険」な働き方
- SESはエンジニアの労働力をクライアントに提供する客先常駐型ビジネス。指揮命令権は所属元にある(建前)
- メリット:多くの現場・ドライな人間関係・残業に歯止め・正社員の社会保障
- デメリット:案件を選べない・スキルを深めにくい・辞めにくい・給与が低い・待機リスク・ブラック混在
- 実務経験者には合理的な選択肢。実務未経験者は原則避けるべき
未経験からエンジニアを目指すなら、まずは未経験は正社員を選ぶべき理由を踏まえて、自社開発・受託も含めた選択肢を広く比較しましょう。
SES・自社開発・受託のラベルは求人票だけでは見抜きにくいので、企業の内情を知る転職エージェントを複数使って情報を集めるのが、遠回りに見えて一番の近道です。1社目の選び方はエンジニア1社目の選び方Top5も参考になります。
よくある質問(FAQ)
Q. SESと派遣の違いは何ですか?
指揮命令権の所在が違います。派遣契約では派遣先の企業がエンジニアに直接指示を出せますが、SES(準委任契約)では指揮命令権は所属するSES企業にあります。働く場所がクライアント先という点は同じなので、外から見ると区別がつきにくいのが実情です。
Q. 未経験でSESに入るのは絶対にダメですか?
絶対ではありませんが、開発経験を積めない現場に回されるリスクが高く、原則おすすめしません。どうしても選ぶなら、配属実績や還元率を開示している会社に絞り、入社者のレビューを徹底的に調べましょう。判断材料は未経験SESやめとけの理由にまとめています。
Q. SESから自社開発企業に転職できますか?
できます。SESでも開発案件で実務経験を積めていれば、転職市場では十分評価されます。ポイントは「何の現場で何を担当したか」を語れること。逆に開発と無関係の現場が続いているなら、経歴が固まる前に早めに動くべきです。自社開発企業の実態も読んで、転職先のイメージを固めておきましょう。
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