「正社員は安定してるけど稼げない」は半分ホントで半分ウソ
「フリーランスの方が稼げるって聞くけど、正社員のままでいいのかな……」。SNSでフリーランスの華やかな発信を見るたびに、そんなモヤモヤを抱えていませんか。
先に結論です。実務未経験者と安定志向の人には、正社員エンジニアが最適解です。一方で、十分な実務経験を積んだ高収入志向の人にとっては、正社員の「安定」がむしろ収入の上限になることも事実。つまり大事なのは優劣ではなく、自分が今どのフェーズにいるかです。
この記事では、正社員とフリーランスの両方を経験した現役エンジニアの目線で、正社員エンジニアのメリット7つ・デメリット6つを対策つきで解説します。さらに、実務未経験者が正社員を選ぶべき理由と、正社員の内定が出ない場合の現実的な一手までまとめました。
この記事でわかること
・正社員エンジニアのメリット7つとデメリット6つ(対策つき)
・正社員・フリーランス・アルバイトの違いが一目でわかる比較表
・実務未経験者が正社員を選ぶべき3つの理由
・正社員の内定が出ないときの現実的な戦略
正社員エンジニアとは?フリーランス・アルバイトとの契約の違い
正社員エンジニアとは、会社と雇用契約を結び、無期契約(期間の定めなし)で働くエンジニアを指します。よく比較される働き方との違いは次のとおりです。
- フリーランスエンジニア:業務委託契約を結び、有期契約で働く(詳細はフリーランスのメリット・デメリット)
- アルバイトエンジニア:雇用契約を結び、有期契約で働く(詳細はアルバイトエンジニアという選択肢)
ポイントは「雇用契約か業務委託か」と「無期か有期か」の2軸です。正社員だけが両方の保護(労働法の保護+無期契約)を受けられる働き方であり、この差がメリット・デメリットのほぼすべてを説明します。
正社員エンジニアのメリット7つ
1. 収入が安定している|法律上、簡単には解雇できない
フリーランスの世界では「仕事がないから契約終了」は日常茶飯事です。実際、落ち度ゼロでも契約終了になるケースは珍しくありません。アルバイトや契約社員も、有期契約である以上さほど変わりません。
一方、正社員は法律上、簡単に解雇できません。解雇には客観的で合理的な理由が求められるため、「なんとなく合わないから」では切れないのです。収入が途絶える心配が少ないことは、住宅や家族などライフプランを立てるうえで最大の武器になります。
2. 育成前提の採用でスキルの幅を広げやすい
実務未経験の正社員は、育成を前提として採用されます。上司のレビューとサポートを受けながら、未経験分野へ次々と挑戦できる環境です。
中途採用でも「未経験分野だけど、勉強しながらやってみて」と任せてもらえることが多いです。正社員の成長は会社の資産になるため、会社側にも育てるインセンティブがあるからです。フリーランスが「得意分野しか任されない」のと対照的で、これが未経験者に正社員をすすめる最大の理由です。
3. 人脈とチーム経験が深まる
正社員は上司の指導を受けるだけでなく、後輩の育成やチームのリードを任される機会があります。同期との長い付き合いも生まれます。
「後輩を育てた」「チームをまとめた」という経験は、コードを書く力とは別軸の市場価値です。現場でよくあるのは、フリーランスとして高単価を狙う段階になって、リード経験の有無が単価の壁になるケース。マネジメント経験は正社員時代にしか積みにくいと覚えておきましょう。
4. 厚生年金で将来受け取れる年金が多い
フリーランスが加入するのは国民年金のみ。一方、正社員は国民年金に厚生年金が上乗せされ、保険料の半分を会社が負担してくれます。同じ収入なら、将来の受給額に大きな差がつく仕組みです。
フリーランスはこの差を自力の資産運用で埋める必要がありますが、正社員はその時間を本業のスキルアップに充てられます。地味ですが、長期で効いてくるメリットです。
5. 社会保険が手厚い|働けなくなっても保障がある
体調を崩して働けなくなった場合は傷病手当金を受け取れます。会社都合の退職なら雇用保険(失業手当)も適用されます。健康保険料も会社が半分負担してくれます。
フリーランスには傷病手当金も失業手当もありません。「働けなくなった瞬間に収入ゼロ」かどうかは、正社員とフリーランスの決定的な違いです。
6. 退職金制度がある会社が多い
勤続年数に応じて退職金が積み上がる会社なら、老後資金の不安を大きく減らせます。フリーランスに退職金はないため、これも正社員ならではのメリットです。
ただし、近年は退職金制度自体がない会社も増えています。退職金の有無と算定方法は入社前に必ず確認しましょう。求人票のチェックポイントは未経験求人の見るべき場所Top5にまとめています。
7. 住宅ローンなどの審査に通りやすい
自宅を購入する際、正社員は収入の安定性が評価されるため、ローン審査に通りやすい傾向があります。金利や返済期間などの条件面でも有利になりやすいです。
フリーランスは収入が高くても審査で不利になりがちです。現場でも「家を買うために一度正社員に戻る」エンジニアは実際にいます。ライフイベントの予定がある人ほど、このメリットは重く見るべきです。
正社員エンジニアのデメリット6つと対策
1. 会社の倒産・事業縮小リスク
解雇されるリスクは小さくても、会社そのものが倒産・事業縮小するリスクはゼロになりません。「会社は潰れないだろう」という前提でキャリアを組むのは危険です。
【対策】いつでも同水準の待遇で転職できる準備をしておきましょう。社内でしか通用しない「社内価値」ではなく、どこでも通用する「市場価値」を高めるのがポイントです。
2. フリーランスより収入が伸びにくい
同じスキルレベルなら、正社員よりフリーランスの方が受け取る報酬は高くなる傾向があります。企業側から見ると、正社員は社会保険料の負担や解雇のしにくさというコストを抱える分、「いつでも契約終了できるフリーランス」には高い単価を払えるからです。安定と報酬はトレードオフの関係にあります。
【対策】安定より収入を優先したい人は、実務経験を積んでからフリーランスへの転向を検討しましょう。収入の上げ方全般はエンジニアが収入を上げる3つの手段で解説しています。
3. スキル停滞のリスク|現場を簡単に移れない
フリーランスと違い、正社員は「この現場、成長できないな」と思っても簡単に移動できません。レガシーな技術しか使っていない会社や、担当範囲が極端に狭い会社に入ってしまうと、在籍年数だけ増えて市場価値が上がらないという最悪のパターンに陥ります。
【対策】入社前に求人票の「使用技術」欄を確認し、モダンな技術を幅広く採用している会社を選びましょう。
4. 社会保険料の負担は収入に比例して重くなる
厚生年金は将来の受給が手厚い反面、収入が上がるほど毎月天引きされる保険料も増えます。国民年金の保険料が収入によらずほぼ定額なのと比べると、高収入帯では負担の差がはっきり出ます。
【対策】確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)やNISAなど、正社員でも使える節税・資産形成の制度を活用しましょう。「天引きされて終わり」にしない工夫は可能です。
5. 経費・節税の自由度が低い
フリーランスは事業に必要な支出を経費にできます。例えばリモートワークなら家賃や水道光熱費の一部、情報交換目的の飲み会は接待交際費として認められる余地があります。正社員は給与所得控除こそあるものの、個別の支出を経費化する自由度はほぼありません。
【対策】書籍代・勉強会参加費・リモート環境の整備費などを会社が負担してくれるかを、入社前の条件確認に含めましょう。福利厚生は実質的な非課税収入です。
6. 退職すると履歴が残る
正社員を退職すると職務経歴に退職履歴が残り、短期離職の繰り返しは次の転職で不利に働きます。気に入らない上司や案件に当たったくらいで辞めるのは得策ではありません。
【対策】市場価値が高ければ転職履歴の足枷は凌駕できます。辞める前に「今の自分は市場でどう評価されるか」を転職エージェントとの面談で確かめるのが安全です。
【比較表】正社員・フリーランス・アルバイトの違い
ここまでの内容を、3つの働き方で整理します。
| 項目 | 正社員 | フリーランス | アルバイト |
|---|---|---|---|
| 契約形態 | 雇用契約(無期) | 業務委託(有期) | 雇用契約(有期) |
| 収入の安定性 | 高い | 低い | 低い |
| 収入の上限 | 伸びにくい | 高い | 低い |
| 未経験の入りやすさ | 普通 | ほぼ不可 | 入りやすい |
| 育成・レビュー | 手厚い | なし(即戦力前提) | あり |
| 実力不足時のリスク | 簡単には解雇されない | 即契約終了 | 契約を更新されない |
| 任される仕事の幅 | 未経験分野にも挑戦可 | 得意分野に固定されやすい | 雑用が多め |
| 社会保険・年金 | 手厚い(会社が半分負担) | 国民年金・国保のみ | 条件を満たせば加入可 |
| 確定申告 | 不要 | 必要 | 原則不要 |
フリーランス側の詳しい実情はフリーランスエンジニアのリスクTop6もあわせて読むと、両面から判断できます。
実務未経験者が正社員エンジニアを選ぶべき3つの理由
比較表のとおり、未経験目線では正社員が最も成長しやすい選択です。フリーランスの高単価や自由は、実務経験を積んだ後に初めて活かせます。順番を間違えて成長機会を失わないために、ここからは未経験者に絞って3つの理由を掘り下げます。
理由1:育成を前提として雇用される
- フリーランス:即戦力として契約される。育てても会社の資産にならないため、実力不足なら即契約終了
- アルバイト:育成前提だが、飲み込みが悪ければ契約を更新しないという判断ができる
- 正社員:育成前提かつ、多少飲み込みが悪くても簡単にはクビにできない
未経験者は必ずどこかでつまずきます。そのとき、切られる心配をせず上司のレビューを受けながら学べる猶予は決定的な差です。簡単に契約を切れない存在だからこそ、会社も正社員へ長期的に育成コストを投じられます。
理由2:技術の幅を広げやすい
フリーランスは得意分野を任される傾向にあります。不得意分野は別の即戦力へ任せた方が早いからです。アルバイトも雑用の比率が高く、成長につながる案件は正社員に回されがちです。
正社員なら「未経験分野だけど、勉強しながらやってみよう」と任せてもらえます。正社員の成長は会社の資産になるため、会社側にも挑戦を支える理由があるのです。
正社員のうちに広く技術を磨き、得意分野を見つけましょう。深く尖らせるのはフリーランスになってからでも間に合います。将来の独立を考えるならフリーランスのメリット・デメリットから逆算してください。
理由3:税金や資産運用に時間を取られず、自己研鑽に集中できる
フリーランスは確定申告が必須で、年金や保険も自分で設計する必要があります。税金や資産運用の勉強と実践に、毎年まとまった時間を取られます。アルバイトは確定申告こそ原則不要ですが、給与が低く、他のバイトとの兼業で学習時間が削られることもあります。
正社員は原則として確定申告が不要で、年金・保険も充実しています。キャリアの序盤は、1時間でも多くコードと向き合った人が勝ちます。営業や事務作業ではなく、技術の自己研鑽に集中できる価値は未経験のうちほど大きいのです。
正社員の内定が出ない場合は「アルバイトエンジニア」という一手
「正社員を目指すべきなのはわかった。問題は内定が出ないこと!」——そんな場合は、アルバイトエンジニアからスタートするのが現実的です。
待遇は正社員に劣るものの、実務経験を確実に積め、半年から1年程度で正社員に登用されるケースもあります。具体的な戦略はアルバイトエンジニアはあり?正社員になる3ステップにまとめています。
避けたいのは、内定が出ないからとスクールやサロンで勉強だけを続けることと、「未経験歓迎」に釣られてブラックSESへ入ることです(未経験SESはやめとけと言われる理由)。市場で評価されるのは学習歴ではなく実務経験です。
同時に転職活動の質も見直しましょう。未経験可の優良求人は自力では見つけにくいため、転職エージェントは複数登録が基本です。応募書類やポートフォリオはポートフォリオで評価される15のポイント、選考対策は未経験面接の頻出質問Top10を使って磨き込みましょう。
正社員エンジニアが向いている人3タイプ
1. 実務未経験者
正社員は育てれば会社の資産になるため、未経験でも積極的に育てようとする会社が多いです。ただし、上司のレビューを受けながら開発できる自社開発か受託開発の企業など、育成環境のある会社を選ぶことが前提です。
2. スキルアップに専念したい人
正社員は確定申告・営業活動・単価交渉が不要です。税や資産運用の勉強に割く時間が少なくて済む分、技術の勉強に全振りできます。市場価値を最速で上げたい時期には、むしろ正社員の方が効率的です。
3. 扶養家族が多い人
扶養家族が多いほど、社会保険のメリットは大きくなります。配偶者や子どもの保険料負担を抑えられるため、家族を養う立場なら正社員の安定は数字以上の価値があります。
まとめ|「今の自分のフェーズ」で選べば迷わない
- 正社員の強みは「解雇されにくい安定」「育成前提の採用」「手厚い社会保険」の3本柱
- 弱みは「収入の伸びにくさ」と「現場を選べないスキル停滞リスク」
- 実務未経験者・安定志向・扶養家族が多い人には正社員が最適解
- 高収入志向なら、正社員で実務経験を積んでからフリーランス転向が王道ルート
- 正社員の内定が出ないなら、アルバイトエンジニアで実務経験を先に積む
働き方に「絶対の正解」はありませんが、順番には正解があります。まず正社員で市場価値を作り、その後に働き方を選ぶ——これが遠回りに見えて最短ルートです。
これから正社員転職を目指すなら、転職エージェントは複数登録が基本です。エージェントごとに持っている求人が違うため、比較することで「使用技術がモダンで育成に前向きな会社」に出会える確率が上がります。
1社目を見極める基準は未経験エンジニアの1社目の選び方Top5、将来フリーランスも視野に入れている人はフリーランスのメリット・デメリットから読み進めてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 正社員とフリーランス、結局どちらが稼げますか?
同じスキルなら額面はフリーランスの方が高くなる傾向があります。ただし社会保険・退職金・有給などを含めた「実質的な総報酬」で見ると差は縮まり、収入が途絶えるリスクはフリーランスの方がはるかに大きいです。判断材料はフリーランスのリスクTop6にまとめています。
Q. 未経験でも正社員エンジニアになれますか?
なれます。ただしポートフォリオの質と応募先の選び方で難易度が大きく変わります。ポートフォリオで評価される15のポイントと内定が出ないときの対策3ステップを参考に、転職エージェントの書類添削も併用するのが近道です。
Q. 未経験からいきなりフリーランスになるのはありですか?
おすすめしません。フリーランスは即戦力前提のため、未経験では案件の獲得自体が難しく、契約できても育成なしで実力不足なら即終了になり得ます。まず正社員で実務経験を積む方が結局は近道です。詳しくはフリーランスになってはいけない人Top3と未経験からフリーランスへのロードマップを参考にしてください。
Q. 正社員からフリーランスになるベストなタイミングは?
「即戦力として一人で開発を回せるようになってから」が目安です。フリーランスは育成してもらえないため、実務経験が浅いうちの独立は契約終了のリスクが高くなります。独立前の準備はフリーランス1年目にやるべきことTop5が参考になります。
Q. 正社員の内定が出ません。勉強を続けるべきですか?
勉強だけを続けるより、応募戦略の見直しと実務経験を積む手段の変更が有効です。内定が出ないときの対策3ステップで原因を切り分けつつ、アルバイトエンジニアにも応募してください。数ヶ月でも実務経験がつけば、正社員選考で示せる材料が増えます。
Q. 正社員ならどの会社でも良いのですか?SESでも?
どの会社でも良いわけではありません。未経験の1社目は、上司のレビューを受けながら開発できる自社開発か受託開発の企業を優先しましょう。未経験でのSES入社には、ITと無関係の業務へ配属されるリスクもあります。詳しくは未経験SESはやめとけと言われる理由で解説しています。
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